カテゴリーをこえた挑戦(選手育成のための参考文献)

加藤 三彦 談
元・能代工業高校バスケットボール部監督

 カテゴリーがひとつ上のチームと練習試合をしていたのは中学時代でしたが、指導者として能代工業へ戻ってきたとき、いちばん最初にやったのがカテゴリーをこえた練習でした。
 地元の大学や実業団のJR東日本チームに胸を借りたわけです。このほかにも、夏休みや春休みには能代工業OBのメンバーが全国から集まってくれます。いつものことながら結束力、愛校心には脱帽します。それも全日本クラスの実力がある人ばかり。
 OBにとっても後輩と汗を流すのは楽しみのひとつでした。彼らは決して手を抜きません。そんなことをすれば後輩のためにならないとわかっているからです。
 高校生と全日本クラスの真剣勝負は何度もやっていると点差が縮まってきます。最後の対戦ともなれば、若さという体力に分のある高校生チームが勝つようになります。
 カテゴリーをこえた練習にも逆カテゴリーがあります。地元の大学や実業団に胸を借りる一方で、カテゴリーのひとクラス下である中学生チームと対戦させました。私が選手時代にいちばんイヤだった練習はこの中学生相手の練習試合でした。
 なにしろ罰則つき。得点されたら一点につきコートをダッシュ十往復です。もちろん、理に適った罰則です。中学生が高校生を相手に一点でも取るということは、正攻法で攻めているからです。
 中学生相手にファウルをするのも恥ずかしいことでした。シュートを打つ時にブロックできない、つまりフォローにいくタイミングが遅かったからファウルになった。それだけ反応が遅くなっているわけです。
 年下を相手にやるときには基本を「完璧」に求められました。田臥勇太がいたころです。十二歳以下でおこなうバスケットのミニバスの女の子相手に練習試合をさせたことがありました。
「お前ら、彼女たちをバカにするんじゃないよ。このチームは小学生だけど全国大会にいくチームなんだから。ハーフコートより向こうへ運ばれたらもう終わりだよ」
 ミニバスの女の子たちよりも高校生のほうが緊張していたと思います。なにしろ、カテゴリーが上の人たちと対戦することが当然でしたから。中学生と試合をさせたこともありますが、ミニバスチームとの対戦は考えたことがなかったでしょう。
 常勝軍団といわれた彼らですが、ここでも全力勝負。追う立場、チャレンジャーとしての立場ではなく、追われる立場、しかもプライドを賭けた戦いです。
技を磨く。心を磨く。
人一倍、高度なレベルに達する人に共通するのは、高いプライドをもっていることです。傲慢にならず、「負けてたまるか」という闘争心にスイッチを入れられる人ほど、成長力があるものです。
 ちょっと視点を変えた練習もいろんな意味で効果があったと思っています。このカテゴリーをこえた挑戦は校内のほかの部にも取り入れられました。球技から武道、個人競技から団体競技などあらゆる種目です。まったくちがう競技でも参考になることはあります。

選手育成の参考になれば幸いです。CALDIO FC